減災対策推進特別委員会2日目は、福岡県議会にて、『災害時における要配慮者支援』についてヒアリングを行いました。
福岡県は、人口約517万人、総面積は約49万9千ha、全国の総面積の1.3%、九州・沖縄の11.2%を占めています。29市・29町・2村を有し、福岡都市圏を中心に人口が増加し、九州の総人口の36.0%を占めています。
福岡県の自然環境は、北部には筑前海(玄界灘、響灘)、豊前海(周防灘)、西南部には有明海が広がっています。海には、筑後川、遠賀川、矢部川などの河川が注ぎ込んでおり、流域には平野が開けています。また、英彦山地、筑肥山地、背振山地などの山岳地帯のほか、三郡山地など都市近郊の山地もあります。想定される災害も地域ごとに異なります。
福岡県では、令和4年度から「個別避難計画」作成推進事業を推進しています。本事業では、要支援者の安全・安心を高めるため、個別避難計画の作成率が低い市町村を対象として、計画作成への理解向上および避難支援者の確保等に取り組み、全市町村の計画作成率が100%に近づくよう支援する事業です。内容としては、避難支援者の確保、計画手順書作成に向け協議を行う場の設置、計画手順書の作成、個別避難計画の作成と検証、市町村独自の取り組みへの支援等が挙げられます。
「個別避難計画」作成の流れとして、まず庁内外における連携体制の整備を行っています。つまり「個別避難計画」作成の必要性や支援を必要とする方が地域に暮らしていること、発災時は要援護者の避難支援を皆で協力して行うことなど、啓蒙・啓発をしていく取り組みです。地域の自治会や社会福祉関係者、市町村など、要援護者を把握し、日頃から顔のみえる関係を築くこともその一つです。次に、ハザード状況から対象地区、心身状況・世帯状況等から、対象地区や対象者を選定します。そして、対象の方の避難支援関係者や避難支援実施者に計画の意義や事例を説明し、対象者の基礎情報の収集を行った上で、ケース会議を開くなどし計画を作成します。計画は、一度作成したら、それで完結するのではなく、より実効性を確保するために、地域防災訓練等において、対象者、避難支援者、関係者が災害時を想定した避難を行い、改善をはかります。
作成の課題として、避難支援を行う人材の確保が難しい(支援をしたいと思っても、怪我や事故等のリスクを懸念してしまうなど)、計画作成においては福祉職への負担が大きくなる、そもそも地域のつながりが希薄になり、要支援者が見えてこない等が挙げられます。それら課題に対して、福岡県では、地域防災活動への出前講座を実施し、地域のつながりで避難支援を行う環境醸成、「個別避難計画」作成における福祉職の負担軽減をはかる取り組みを始めるなどしており、横浜市も今後それら取り組みを注視し、活かしていくべきと考える。
また、福岡県では、各市町村における防災力向上を支援する取り組みとして、平成29年に『福岡県防災ハンドブック』を作成しました。その経緯としては、平成27年の熊本地震の発生、また福岡県の小規模な市町村の中には、マンパワー不足等により、防災ハンドブックを作成できていない状況もあり、著作権フリーで、市町村に対して、県の作成したハンドブックの活用を推進しています。
市町村によっては、県の作成した防災ハンドブックに各市町村のハザードマップを付けて配布をしたり、その地域特性等に合わせて、必要なページを抜粋して独自のハンドブックを作成するなどしています。
さらには、福岡県は、情報量の多い「福岡県防災ハンドブック」では、必要な情報だけを読み込むのは難しいと考え、高齢者、子ども、外国人など、各特性に合わせたハンドブックも作成しています。高齢者向けでは、文字を見やすく大きくしたり、子ども向けでは、低学年用と高学年用、風水害編・地震津波編に分け、外国人向けでは、福岡県内に在住している外国人の国籍を把握して多様な言語で作成しています。また、インバウンドに向けのポケットサイズの災害時の対応を示したリーフレットも発行しています。
福岡県では、総合的な防災ハンドブックと、要配慮者の個別性を的確にとらえた防災ハンドブックを、マクロとミクロの視点で作成して、各市町村に対する支援、要配慮者に対するきめ細やかな支援、双方に力を入れており、横浜市においても、各区局連携で防災力向上と要配慮者支援に力を入れていくべきと学びました。