今から約4年前、2019年10月31日に首里城火災が発生し、貴重な文化遺産が消失しました。消防にあたった那覇市消防局から、火災発生時の対応や首里城火災から得られた教訓についてヒアリングしました。
首里城は歴史上、数回の消失と復元を繰り返していますが、1945年にも沖縄戦においてアメリカ軍の攻撃により全焼しました。終戦後、首里城復元の構想が強まり、1986年に国営公園に復元整備することが閣議決定され、沖縄本土復帰20周年にあたる1992年に正殿、瑞泉門等の復元完成により、一部開園されました。2000年には史跡「首里城跡」が世界遺産にも登録されました。
しかし、2019年10月31日午前2時41分頃、「正殿が燃えている」の一報が那覇市消防局に入り、2時42分の第一次出動(8台、31人)、2時45分の第二次出動(11台、41人)を行いましたが、深刻な火災状況のため、3時05分には、近隣市町村応援要請による第三次出動(43台、145人)が行われました。
首里城は標高130mに位置し、辿り着くには、坂道や階段を登らなけばならず、さらには施錠された門、高い城壁と消火活動を阻む要因が複数ありました。また、火災発生時は強い北風が吹いていたこともあり、南側への延焼が激しく、燃えたかる炎に消火活動も中断せざるを得ない危険な状況がありました。鎮火したのは、11月1日午後1時30分、首里城正殿を含む建物8棟が消失しました。
すぐに、那覇市消防局(50人)、総務省消防庁(2人)、消防研究センター(5人)の体制で火災調査が行われました。51日間の調査が行われ、延べ657人が調査に関わりましたが、原因を究明することができませんでした。
首里城正殿等の復元に向けては、内閣府沖縄総合事務局において「首里城復元に向けた技術検討委員会」を設置し、首里城正殿等の復元に向けた技術的な検討が行われています。また沖縄県では、「首里城公園管理体制構築検討委員会」を設置し、首里城公園の管理体制構築に関する検討を進めています。
現在、2026年を目途に首里城正殿の復元工事が進められています。1992年の復元時と同様、正殿には木材等の大量の可燃物を扱っているため、防災・防火対策を講じながら、工事が進められています。復元工事中においても、合同訓練を毎月実施し、防火・防災対策の課題を洗い出しています。
また、2019年の火災を教訓に、これまで設置されていなかったスプリンクラー、火災通報装置、連結送水管を正殿に設置し、消火水槽・防火水槽、消火栓の整備が行われます。合わせて、門の自動解錠システムを採用するといった改善が図られます。
今回の視察において、本市においても重要文化財のみならず、あらゆる施設等において、火災の発生を想定した、防災訓練を実施し、課題を抽出し、できるだけ早く備えを行うことの重要性を学びました。いつ、どこで、何が原因で火災が発生するかも分かりません。首里城火災の教訓を生かし、本市の初期消火体制の充実と未然防止のための施策を推進して参ります。